2011年12月18日
星空公団
星空公団では、甲府盆地の星空の見えやすさを継続的に調査するため、デジタル一眼レフカメラを用いた夜空の明るさ連続モニタ装置を山梨県立科学館に設置しています。この装置を使って2011年12月10日夜の皆既月食中の夜空の明るさを調査しました。調査結果から、月食が進むにつれて夜空の明るさが10倍以上変化し、皆既時には月の影響がほとんどない程度まで夜空が暗くなることが明らかになりました。これらの結果は、我々の生活と夜空の明るさとの関係を明らかにする基礎データとして役立てられます。
皆既月食中の夜空の明るさの測定は、山梨県立科学館(山梨県甲府市)の協力のもと、同科学館に設置されたデジタル一眼レフカメラにより行いました。撮影データの記録には、カメラの撮影情報をほぼ加工なく出力できるRAW形式を採用しています。皆既月食の起きた2011年12月10日18時から翌朝6時まで、5分間隔で真上の夜空を撮影し、屋内に設置したパソコンでデータの分析を行いました。また、比較のため月光の影響がほとんどない2011年11月25日にも同様の撮影も行っています。
添付資料に、それぞれ2011年11月25日および2011年12月10日に測定された甲府盆地の夜空の明るさを示します。11月25日は月光の影響がほとんどなく、夜空の明るさが明け方に向かって暗くなっていく傾向が見られています。この傾向は、都市部の夜空に見られる特徴的なカーブであり、甲府盆地での2年間の連続観測からも、この変化が平均的に見られています。また、このカーブから、都市の光によって夜空の明るさが約1.5等級/□”変化することが分かります。
一方、12月10日は満月であり、日没とともに月光の影響で夜空が明るくなっています。しかし、部分食の始まった21時45分頃から夜空は暗くなり始め、皆既月食の始まる23時頃には18等級/□”程度まで暗くなりました。明るさの変化は2.5等級/□”であり、これは光の量に換算すると約10倍になります。つまり、皆既月食によって夜空の明るさが1時間に10分の1まで減少したことになります。また、理想的な夜空においては皆既月食前後の夜空の明るさは皆既月食時間帯を挟んで対称なカーブを描くことが予想されますが、都市部の明るさの影響により、明け方に向かって明るさが減少していく傾向も見られています。
これらの調査結果から、月光が夜空の明るさに大きな影響を与えていることがわかりました。同時に、月明かりの影響がない夜でも、都市部の明かりによって満月の明るさに匹敵する約1.5等級/□”の明るさ変化が起こっていることも明らかになりました。これらの結果は、我々の生活と夜空の明るさとの関係を明らかにする基礎データとして役立つと考えています。
【PDF版のダウンロード】