高等学校における授業において,球状星団・散開星団の測光を行いHR図(CM図)を作成する実習が広く行われています.本研究では,冷却CCDおよびデジタル一眼カメラを用いた散開星団の測光結果から,高価な冷却CCDカメラおよびフィルタの代用として,デジタル一眼カメラの可能性を評価した結果を報告します.
デジタル一眼カメラと冷却CCDの比較を行うため,以下の条件で観測を行いました.
観測日時 | 2013年11月22日19~21時 |
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観測場所 | 横浜市立横浜サイエンスフロンティア高校屋上天体ドーム内(神奈川県横浜市) |
観測対象 | ペルセウス座散開星団M34 |
光学系 | タカハシSKY90(D 90mm,F.L. 500mm) |
冷却CCD | タSBIG ST-402ME/A(4.6×6.9mm) |
デジタル一眼カメラ | Canon EOS Kiss X4(22.3×14.9mm) |
なお,デジタル一眼カメラについては撮影データをRAW形式で保存し,BチャンネルとGチャンネルを測光に使用しました.撮像条件および測定範囲は表2と図1の通りです.図1に示す恒星について,デジタル一眼カメラと冷却CCDを用いて測光を行い,その結果を比較しました.
撮像時刻 | 露出時間 | 対象高度 | |
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CCD(Johnson V) | 19:17:59 | 120秒×3 | 54.7° |
CCD(Johnson B) | 19:36:33 | 50秒×3 | 58.2° |
デジタル一眼カメラ | 20:20:57 | 30秒×3 | 66.3° |
冷却CCDおよびデジタル一眼カメラを用いた測光結果よりCM図を作成しました.いずれの結果からも主系列星の確認はできましたが,デジタル一眼カメラの測光結果については色指数(B-V)が圧縮されているようなグラフとなりました.
冷却CCDとデジタル一眼カメラの測定系の検証のため,色指数(B-V)の比較を行いました.色指数が大きく温度の低い恒星ほど,デジタル一眼カメラの色指数が小さくなることが確認されました.
BフィルタとVフィルタ(Gチャンネル)それぞれについて,冷却CCDとデジタル一眼カメラとの測光値の差を,色指数(B-V)を基準として比較しました.特に色指数が大きい恒星において,デジタル一眼レフカメラのB等級が明るく測光されることがわかります.このため,それぞれのフィルタの波長特性の違いについて検証しました.
測光用フィルタの透過波長特性とデジタル一眼カメラのRGB 3色分解波長特性の測定を行いました.Vフィルタ(Gチャンネル)についてはおおむね一致するものの,Bフィルタについてはピーク波長が50 nm程度ずれており,また半値幅についても2倍程度の差があることがわかりました.
測光用フィルタとデジタル一眼カメラの波長特性を用い,以下の手順でモデル計算を行いました.
この方法で計算した結果は,(1)に示した観測結果とよく一致し,フィルタの特性が色指数(B-V)に影響していることが確認されました.
デジタル一眼カメラを用いて測光を行う場合において,特にBチャンネルを使用する場合には,その波長特性が一般的な測光用フィルタと異なるという点に注意が必要です.特にCM図を作成するような実習では,本来のCM図に対し,色指数が圧縮されて観測されます.このため,デジタル一眼カメラの分光特性を測定し,両者の関係をあらかじめ把握しておく必要があることが明らかになりました.